恐竜のモデリングについて

1.リアルなモデルを作るには


リアルなモデルやCG,アニメをつくる基本はリサーチ(調査検証)から始まります。
現実の姿、事実がどうなのかこれを十分調べないとリアルさは得られません。特に今回は
体系的に網羅するのが目標でしたから、購入した恐竜の専門書は30冊を超えました。
どの恐竜を代表種属として選択しモデリングするか。決定するのに半月程かかりました。

完成するまで、のべ半年程かかりましたがもっとも頭を悩ましたのが、専門書によって
恐竜の姿が違うことでした。たいていは、海外の恐竜学者の著書の翻訳書ですから、
結局これは各学者の主張の違いを意味します。一例をあげると、ステゴザウルスの特徴である
背中の骨板は、 交互に並ぶ という説と 左右対称 に並ぶという説に分かれます。どちらが正しいのか
永遠に答えは出ないでしょう。仕方がないので2種類作りました。実際に3DCGで眺めますと
私としては、左右対称の姿の方が自然な感じがしますが、どうでしょうか?

このように、容易に解答が得られないものは複数のタイプをモデリングしました。それ以外に
多かったのが手足の指の数が2から5本まで意見が分かれれる場合があり、各学者の意見を多数決で
決めました。ひどいのは、何十時間もかけて完成直前に、本文の解説とイラストレーターの再現図が
違うことに気づき、泣く泣くボツにして、一から作り直した苦い経験もあります。


2.モデリング時間について

全ての恐竜の中で一番苦労したのはどれだったでしょうか?それは、 トリケラトプス です。
のべ14日、120時間かかりました。ちょうど、去年の5月のゴールデンウィークでしたが
子供たちをどこへも遊びに連れてやらずに申し訳ないと思いながら徹夜して仕上げました。
それだけに、一番思い入れがありますし自分のイメージ通りピシャリとできました。

デジタルの世界は原型(プロトタイプ)を作ってしまえば、その亜種はコピーして変形させることで
作業時間を節約できるのはご存知の通り。人間なら、男と女の2つあれば、あとは太め、スリムな
体型という具合に変形加工すればおしまいですが、残念ながら恐竜は基本種属が多岐にわたるため
大変でした。大体、基本種の作成には平均して50から60時間、のべ4、5日かかりました。
いったん、できてしまうと亜種は10から20時間でできあがります。それでも、1から3種までで
それ以上になると、ほとんど違いがないような種属を作ることになるので宣伝文句にはいいかも
知れませんが実質的な意味がないのであえて作っておりません。コレクションに含まれていないものは
かなりの類似性がある種のはずですからご自分で改造されるとよいでしょう。さほど時間もかからない
はずです。


3.正しい恐竜の姿を再現するということ

これは3DCGに限りませんが、一体正しい恐竜の姿の再現など可能でしょうか?我々の答えは
ノーです。我々40才前後の世代は、ティラノザウルスというとゴジラのように尾をひきずって
直立姿勢でのしのしと歩くイメージが焼き付いています。これは、我々が子供の頃に当時の学者の
意見に基づいて本やTV、映画の中でそういう姿で描かれていたからです。それが、ジュラシック
パーク以降、尾を引きずらずに前かがみに俊敏に動くイメージにかわりました。多分今の子供たちは
それがティラノザウルスの姿だと焼き付いているはずです。

このように誰も実際に見たことがない以上、どんなに専門の学者であっても推測の域を出ないわけです。
第一骨格の再現自体、バラバラに出てきたものをいろいろな点から検討して、恐らくこうであろうという
位置につないだものにすぎません。ましてや、色や柄に至っては、一切の手がかりがないわけです。

結局、私たちは恐竜論争の世界よりも自分のイメージの世界に従えばいいと思います。学者によれば、
スピルバーグのTレッックスは手が大きすぎ、俊敏すぎる。またベロキラプトルとして登場する恐竜は
どちらかといえば ディノニクスドロメオサウルス の姿であり、ベロキラプトル自体はあのような
姿ではないと批評されています。確かにどの参考書も ベロキラプトル は一致して、ジュラシックパークに
出てくる恐竜の姿と違うので、私たちもそのようにモデリングしましたが、理屈はどうであれ、あの
ダイナミックなTレックスの姿は学者が何といおうと、素晴らしいと感じる人の方が多いでしょう。
子供たちのリクエストにこたえて、好きな色、柄でマッピングしてCGやアニメにしてあげる。
それで、私たちの3Dの世界は十分だと思いますが貴方はどう思われるでしょうか?



4.技術的なことを少し

恐竜や人間など有機体は基本的に左右対称であることが多いので、モデリングでは半身だけ作りコピー反転して
結合させることで時間を節約します。問題は結合の処理ですがブール演算は、実行自体はコマンド一発で
あとはPCが勝手に計算して結合してくれますが、反面結合後のデータが飛躍的に増大し又、
結合個所がPC任せになるのでメッシュ形状が汚くなり結果として後始末にものすごく時間がかかります。
この点、50万以下の3Dソフトで一番優れているのは最近ダントツ人気のライトウェーブ5.0です。
独自の結合コマンドを使うと左右対称のドンピシャ重複する座標同士を一つに結合してくれます。
この機能は、他のソフトにはありません。天下の3Dスタジオや3DS Maxでさえ不可能なのです!
開発当時は、ライトウェーブは4.0しかなく、これがまた非常に不安定で、作成したソフトの中でなら
エラーにならないのに、他の3Dスタジオなどに読み込むと穴が空くなどのエラーが発生します。
ソフトf/xの溶接という処理やアニメーションマスターのdxf変換も不安定で似たようなエラーに
なるため使うことができませんでした。個人ユーザーで複数の高価な3dソフトを持っておられる方は
そういらっっしゃらないでしょうから、こういう情報はなかなか得にくいでしょう。

ただ、原則として一つのソフトで全てがまかなえるものは現在のところパーソナルレベルではまだ
出ていません。結局、各自が何を作りたいかで選択するしかなさそうです。キャラクタアニメなら
文句無しにアニメーションマスターです。逆に宇宙船など無機質なものならアニメーションマスター
以外ならどれでもokでしょう。オールラウンドに何でも作りたいなら上記のソフトを2種もつ方が
早く楽にできます。勿論、何時間かかっても気にしないのなら1本で全てをモデリングすればいいでしょうが
私には、アニメーションマスターで木やスポーツカーを作るのは自殺行為にしか思えません。
ライトウェーブなら、レイヤー処理やフラクタル処理があるので一時間もかからないでしょうから。
それでも、1本選べといわれたら万能型で一生もののライトウェーブ5.0でしょうか。20万ほど
しますが...いずれにせよ、3dは金食い虫だとあきらめた方がよさそうですよ。
話がだいぶそれました。結合の件は、え?結局どうしたかって?3D スタジオで、一つずつ左右の点を
手作業で結合していきましたよ!!まったく気の遠くなるような作業でしたけどねッ。

次に、これはモデリング全般に言えますが、自分の頭の中にイメージがはっきり浮かばないときは
無理にモデリング作業に入っても失敗するか、試行錯誤を重ねるため時間がかかるということです。
我々が、アマの方と決定的に違う点は時間的制約(納期)というものが厳然と存在することです。
従って、どうすれば最短時間で目的を達せられるか常に考えなければなりません。この意味で、
鎧竜 アンキロサウルス はなかなかイメージがこれだっと決まらず苦労しました。じゃどうしたか?
コンピューター上で試行錯誤するよりも、もっと自然なより思い通りにあれこれできるもの...
そう、粘土です。粘土をを実際にあれこれこねまわした挙げ句やっとイメージをつかむことができました。
それでも、99%ですか。あと1%どことなく、しっくりいかないところがあります。ここが気に入らんと
はっきりすれば直せるのですが..将来の課題ですね。わかれば無料で改良版を配布します。

最後に、どの手法を使えばリアルに生き物の感じをだせるか。その答えは、意外かもしれませんが
PCの計算に基づく手法はどれも駄目だということ。つまり、手作業で一点ずつ動かして整えていく方法が
ベスト。これが、現時点での私の悟りであります。
ベジエやスプラインに基づく物体はツルツル過ぎるのです。美しすぎるのです。滑らかすぎるのです。
幾何計算による曲線や曲面は完璧ですから。貴方のからだを見てごらんなさい。肌は不規則なでこぼこを
持っているでしょう。かすかな凹凸があるからマネキンとの違いがでるわけですね。勿論実践的には、
この手法や輪切りにしてスキン処理を行う手法にパンブマップなりを併用して擬似的に凸凹に見せるやり方が
ポピュラーではありますが、職人気質なんですかねえ。私にはできません。アニメならごまかせますが、
スチルCGの場合ははっきり違いが出てしまいます。一枚のアルミの板を金槌で叩き出して、
ランボルギーニミウラ の流れるような曲線からなるボディカウルをレストアする板金職人のおっさんが
東大阪にはいますが、機械プレスによる完全な曲線より、人間が手で叩き出す曲線の方が美しく見える..
そんなものだと思います。てなわけで、実際のやりかたは、メタボールか3dスキャナでおおざっぱな形を
作り、一点ずつ叩き出す板金方式か、完全に一枚の面からアルミ板のごとくたたきだすという
やりかたで、製作しています。モデリングの方法は、人それぞれにより違うものです。商品検査のために
国内のパーソナル用の3Dソフトをいろいろ使いますが、イマジン、ソフトFX、TRUE SPACEのような
粘土型の人やアニメーションマスターのゴムひも型、3DFX、レイドリームスタジオやエキストリーム3D
のような積み木型、リアル3D、ライトウェーブや3Dスタジオ、MAXなどの板金型に至るまで
自分に一番あう方法を見つけてください。これは、良い悪いの問題ではなくひとえに相性の問題ですから。



(主要な参考文献)

一冊で全てをまかなえるものはありません。それぞれ、一長一短あります。その中でも、アドバイスするならば
肉食恐竜に興味がある方はグレゴリーポールの本がいいでしょう。肉食恐竜の専門家です。
全体に広く知りたい方は、動物大百科恐竜が骨格から体型までわかりやすく解説されています。ただし、
イラストに一部誤りがあるので注意が必要です。各種属に含まれる同類種をイラストで全て省略せずに網羅してあり
直感的にグループ全体を理解できるのが恐竜絶滅動物図鑑でしょう。高いですけど、一生ものです。
翼竜はあんがいどの事典も詳しくないので、動物百科の翼竜、これしかありません。大体そういったところでしょうか。

恐竜解剖図鑑.....デヴィッドランバード.....同朋社出版.....3600円
恐竜の百科......デヴィッドランバード.....平凡社.......2600円
化石の百科......デヴィッドランバード.....平凡社.......3800円
図説人類の進化....デヴィッドランバード.....平凡社.......3950円
恐竜骨格図集.....グレゴリーポール.......学習研究社.....3000円
肉食恐竜事典.....グレゴリーポール.......河出書房新社....5800円
恐竜絶滅動物図鑑...バリーコックス他.......大日本絵画....12000円
動物大百科恐竜....デビッドノーマン.......平凡社.......4000円
動物大百科翼竜....ペーターベルンホファー....平凡社.......5400円
恐竜のすべて.....ジャンギイミシャール.....創元社.......1300円
恐竜異説.......ロバートTバッカー......平凡社.......4300円
ディノサウルス....LBホールステッド......築地書館......3900円
太古の世界を探る...LBホールステッド......東京書籍......5800円
化石の博物誌.....イヴェットゲラールバリ....創元社.......1400円
化石の写真図鑑....シビルウォーカー.......日本ヴォーグ社...2900円
恐竜の力学......RMアレクサンダー......地人書館......2400円
ワンダフルライフ...SJグールド.........早川書房......2600円
人類の起源......フィレンゾファッキーニ....同朋社出版.....4800円
40億年はるかな旅2.NHK取材班.........NHK出版.....3200円
恐竜年代記......竹内均............教育社.......3500円